2026.01.03

初夢の秘密(上):新年の夜に訪れる古代の予言——日本思想と西洋哲学が織りなす夢の世界

この文章は、100%あきらのオリジナルで作成しています。
初心者の方にも分かりやすいよう、教育番組のような論調で、口語に近い「あなたへの語りかけ」を意識して書きました。
「これまでの文章と作風が違うのではないか?」「何かの本を書き写しただけでは?」と思う方がいるかもしれませんが、断じてそんなことはありません。
解説文とは、
「分からない人に、分かるように書く。誰もが最初は初心者である」
これが、私の信念です。

まえがき

今日は、多くの方が一度は耳にしたことがあるけれど、意外と深く知らない 「初夢」 について、一緒に考えてみましょう。

家族で初夢を語り合う様子

あなたは、子どもの頃、お正月明けに家族と「今年の初夢は何だった?」と話したことがありますか?
私は子どもの頃、布団に入る前にどんな夢を見るか想像して、とてもわくわくしたものです。でも、朝起きて夢を思い出せなかったり、変な夢を見てがっかりしたり……。あの頃の気持ち、今でも少し懐かしく思います。

私はかつて日本思想史を学んだことがありますので、そんな個人的な思い出を交えながら、初夢の奥深いところをお伝えしていきます。

初夢は、ただ楽しいお正月の習慣というだけではありません。
本当は、日本人の心の奥に根付いた、古い時代からの知恵が込められたものなのです。
夢を通じてその年の運勢を感じ、心を整える——それが初夢の本当の意味です。

初夢は、そもそも日本だけのものなのでしょうか?
ここでは、初心者の方にもわかりやすく、西洋哲学史と日本思想史の両方の視点からお話しします。

なぜなら、初夢は日本だけの文化だからです。
西洋の夢占いとは違い、神道や仏教、陰陽道などの日本思想が絡み合った、特別な世界観があるのです。
一方、西洋哲学史では、プラトンやフロイトの夢の考え方が有名ですが、初夢のような新年の予言的な意味づけはあまりありません。むしろ、心の内側を探ることに重点が置かれています。
だから、ここでは日本思想を中心にしつつ、西洋哲学史の視点を加えて、しっかり見てみます。

まず、初夢が本当に日本だけのものかを考えてみましょう。
世界中を探しても、新年の最初の夢を特別に大切にする習慣は、ほとんど見当たりません。 中国から伝わった陰陽道の要素はありますが、日本で独自に発展したものです。

西洋哲学史から見ると、古代ギリシャのプラトンは夢を理想郷のたとえとして使い、フロイトは無意識の表れとして分析しますが、新年の運勢占いのような要素は薄いのです。
一方、日本思想史では、神道の霊性や仏教の無常観が、夢を神仏からのメッセージとして位置づけ、日本だけの文化を生み出しました。

この記事では、全章を通じて初夢の秘密を一緒に解き明かしていきます。

第一章:初夢とは何か——いつ、何が「初夢」なのか。タイミングの謎を解く

さあ、本題に入りましょう。
まずは、初夢の基本から。初夢とは何でしょうか。いつ見た夢が初夢なのでしょうか。そんな素朴な疑問から、一緒に考えてみましょう。
初心者の方にもわかりやすいように、一歩ずつ進めていきます。内容は深く掘り下げますが、落ち着いてお読みください。

まず、初夢の定義を簡単に。
初夢とは、新年の最初の夢のことです。

満月と日本の寺院 (Original)

昔から、この夢の内容がその年の運勢をそれとなく示すと信じられてきました。 でも、なぜ新年の夢が特別なのか。ここで日本思想史の視点が役立ちます。

日本思想では、夢はただの寝ている時の映像ではなく、神仏や自然の霊からのメッセージと考えられます。
神道 では、神々が人間に語りかける手段です。 仏教 では、すべてが変わるという「無常」(むじょう:ものごとは永遠ではない、という考え方)を映す鏡です。 陰陽道 では、陰と陽のバランスが現れます。

一方、西洋哲学史では、プラトンは夢を理想郷の影のようなものと見なし、現実の劣化版と考えました。フロイトは、無意識の抑圧が表れたものとして分析します。
どちらも心の内側に焦点を当てていますが、初夢のような季節的な予言性はあまりありません。こうした違いから、日本だけの深みがわかります。

次に、タイミングの謎です。

現代では、1月1日の夜から2日の朝に見た夢を初夢とするのが一般的です。

しかし、昔は少し違いました。江戸時代より前、日本は旧暦を使っていました。正月は今の2月頃です。

初夢の正確なタイミングは、元日の夜から2日の朝でした。なぜなら、大晦日の夜は除夜の鐘を聞いて煩悩を払い、寝ずに 歳神様 をお迎えする習慣があったからです。 歳神様 とは、豊作や家内の平安をもたらす神様です。この習慣を 「年籠もり」(としごもり) と呼びます。

日本古来の時間観では、日没を一日の始まりとします。

夕方に日が沈むと新しい日が始まるのです。だから、大晦日の夕方からすでに新年です。家にこもり、静かに神様を待つ。これが神道の影響です

仏教の影響で、除夜の鐘の108回を聞いて心を清めてから、ようやく寝るのです。

こうして初夢は、清められた心で迎える最初の夢になります。

満月と日本の寺院 (Original)

西洋哲学史で比較すると、アリストテレスは時間を連続的な流れとして考えました。

日本思想の時間は循環的で、自然のリズムに寄り添います。
こうした違いが、初夢の神秘性を生みます。

明治維新で新暦が導入され、タイミングが変わりましたが、本質は同じです。
現代の初夢は、1月1日の夜(元旦の夜)に寝て、1月2日の朝までにみた夢です。 これが今いちばん一般的で、多くの人がそう考えています。

夢を忘れた場合、昔の人は「中吉」と考えました。
平凡で安定した年という意味です。悪い夢を見たら、塩を振ったりお祓いをしたりします。これは神道の浄化の思想からです。

西洋のデカルトは、夢と現実の区別を疑いましたが、
日本思想は夢を積極的に受け入れ、人生の指針にします。

この章で、初夢の定義とタイミングの背景が少しわかったと思います。
日本思想の時間観と神仏の霊性が深く関わっているのです。

次章では、歴史的な起源を時代ごとに追っていきます。

第二章:初夢の歴史的な起源——平安時代から江戸時代まで、日本思想史の道筋

第一章で初夢の基本とタイミングの謎を一緒に考えましたね。きっと、少し初夢のことが身近に感じられたと思います。でも、ここで少し立ち止まって考えてみましょう。初夢は、いつ頃から始まった習慣なのでしょうか。
実は、千年以上前の時代から、少しずつ形作られてきたものです。 私はこの歴史の流れをお伝えするのが楽しみです。初心者の方にもわかりやすいように、一歩ずつ進めていきます。落ち着いてお読みください。

初夢のルーツは、平安時代(794〜1185年)頃まで遡ります。 この時代、貴族たちは夢を大切にしていました。例えば、 清少納言 が書いた有名な本 『枕草子』 に、夢の話が出てきます。貴族たちは夢を日記に書いて、吉凶を占ったり、神様からのメッセージだと思ったりしていました。ここで大事なのが、神道の影響です。神道は日本古来の信仰で、自然や祖先の霊を敬うものです。夢は、神々が人間に語りかける手段と考えられました。たとえば、歳神様が夢の中でヒントをくれる、という考え方です。

宝船浮世絵 (public domain)

本格的に「初夢」としてみんなが特別に思うようになったのは、室町時代(1336〜1573年)からです。
この頃、 陰陽道 という中国から伝わった占いの思想が大きく影響しました。陰陽道は、陰と陽のバランスや、五行(木・火・土・金・水)の循環で運勢を占うものです。新年の始まりに夢を見るのは、天の意志が強く現れる時だからです。陰陽師たちは、夢の内容を分析して、その年の運勢を教えてくれました。

陰陽道は、仏教とも結びつきました。仏教は奈良時代に伝わったもので、夢を「業」(ごう:過去の行いが返ってくること)の表れと見ます。良い夢は良い業の報い、悪い夢は警告です。この「無常観」(すべては変わる、という考え方)が、初夢に深い意味を加えました。

ここで、西洋哲学史と比べてみましょう。西洋では、古代ギリシャのプラトンが夢を理想郷の影のように扱いました。夢は現実の劣化版です。後のフロイトは、夢を無意識の表れとして分析しますが、季節的な予言のようなものはあまりありません。

日本思想は、神仏からのメッセージとして夢を大切にし、宇宙の調和を重視します。こうした違いが、初夢の独自性を生みました。

時代を進めて江戸時代(1603〜1868年)です。この頃、初夢は庶民の文化として大きく広がりました。平和な時代で、娯楽が増えたからです。浮世絵や俳句に初夢の絵がたくさん描かれました。たとえば、宝船に乗った七福神の絵が人気です。この頃、「一富士二鷹三茄子」という有名な吉夢の順番が定着しました。徳川家康の好物が由来の一つと言われます。

宝船浮世絵 (public domain)

明治維新以降、カレンダーが変わりましたが、初夢の心は残っています。戦後、テレビや雑誌でさらに広まり、今の形になりました。

この歴史を見ると、初夢は神道の霊性、仏教の無常観、陰陽道の占いが混ざり合った、日本だけの宝物です。西洋の考え方とは違い、夢を優しく受け止めて、人生の支えにするところが素敵ですね。

あなたも、この歴史を知ったら、初夢がもっと特別に感じると思います。私も学んでいた頃、古い本を読んで感動しました。

この章で、初夢の歴史的な道筋が少し伝わったと思います。

第三章:初夢の象徴の解釈:一富士二鷹三茄子から続きまで、語呂と日本思想の結びつき

これまでの章で、初夢の基本や歴史を一緒に考えてきましたね。きっと、初夢が古い時代からの大切な習慣だと感じられたと思います。ここで、みなさんが一番楽しみにしているところに進みましょう。 初夢で見たものが、その年の運勢をそれとなく示す——象徴の解釈 です。特に有名な「一富士二鷹三茄子」を、詳しく見てみます。この順番はただの語呂合わせではなく、神道の自然への敬い、仏教の縁起の考え、陰陽道のバランスが込められたものです。初心者の方にもわかりやすいように、一つずつ丁寧に進めていきます。

まず、 象徴解釈 の基本を簡単に。 初夢で見たものが吉凶を表す、という伝統 です。日本思想では、これを神仏の導きや心の鏡として受け止めます。神道では、自然のものが夢に出るのは神様の祝福です。仏教では、良い縁起を表します。陰陽道では、五行のバランスが現れます。

一方、西洋哲学史では、フロイトが夢の象徴を無意識の欲求として分析します。たとえば、長いものは特定の意味を持つ、といった心理的な見方です。 でも、日本思想は違います。象徴を宇宙の調和や神仏のメッセージとして、幸運につなげます。こうした違いから、日本だけの優しさがわかります。

さあ、「一富士二鷹三茄子」を一つずつ見てみましょう。この順番は江戸時代に定着した吉夢の代表です。

まず、一富士。夢に富士山が出てくるのが一番の吉です。 神道では、富士山は聖なる山で、神様が住む場所です。「不二」(二つとない、唯一)や「無事」に通じ、平安な年を意味します。陰陽道では、土の要素の陽の極みで、基盤が固いサインです。仏教からも、変わらない山は永遠の平和を表します。徳川家康が富士を愛したという話も、由来の一つです。

一富士のイメージ

次、二鷹。鷹が出てくる夢です。
鷹は空高く飛ぶ鳥で、神道では神の使いです。陰陽道では、金の要素で、出世や成功を予感します。語呂で「高」に通じ、地位が上がる意味です。家康の鷹狩りが好きだったことから来ているとも言われます。

そして、三茄子。茄子が出てくる夢です。
正月の夢に夏の野菜が出るのは珍しいから、縁起が良いのです。語呂で「成す」に通じ、願いが叶う意味です。神道では、茄子に毛がないから「無毛=無事」です。陰陽道では、水の要素に関連し、実りをもたらします。

この三つの順番は、陰陽五行のバランスがぴったりです。
土(富士:基盤)から金(鷹:成長)、水(茄子:成就)へ流れるように助け合います。

続きもあります。四扇(扇子:末広がりで繁栄)、五煙草(煙が上る:出世)、六座頭(毛がない:無事)です。これらも江戸時代の庶民の知恵です。

吉夢の富士山イメージ

悪い夢の例もあります。歯が抜ける、追われる、などです。
これらは陰の乱れを示しますが、仏教の無常観で、心を整える機会にします。お祓いでポジティブに変えるのが日本思想の優しさです。

この章で、初夢の象徴が語呂と深い思想の結びつきだとわかりましたでしょうか。西洋の心理分析とは違い、日本思想の希望と調和が詰まっています。

あなたも、夢でこれらが出てきたら嬉しいですね。

次章では、良い夢を呼ぶ習慣——宝船や枕の話を見てみます。どうぞお楽しみに。

参考文献・出典

・第三章の象徴解釈は主に江戸時代の辞書『俚言集覧』を参考

・Wikipedia「初夢」(基本的な定義、歴史、一富士二鷹三茄子の由来)

・『枕草子』清少納言(平安時代の夢の記述)

・『俚言集覧』(江戸時代、一富士二鷹三茄子の初出と続きの記載)

・『甲子夜話』松浦静山(江戸時代の初夢関連記述)

・『嬉遊笑覧』喜多村信節(江戸時代の風俗と初夢)

・『故事成語知恵袋』(ことわざの由来)

・北海道神社庁ウェブサイト(歳神様と年籠もりの説明)

・文化庁文化遺産オンライン(宝船の浮世絵など伝統美術)

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